交叉咬合(噛み合わせのズレ)
交叉咬合は、上下の歯の噛み合わせが正常ではなく、横にずれている状態のことです。
通常、上の歯が下の歯よりも少し外側にあるのが理想の噛み合わせですが、交叉咬合では、部分的または全面的に逆になり、下の歯が外側に出てしまうことがあります。
交叉咬合が骨格的な問題から来ている場合、自然に治ることは難しいため、早期に歯科医師の診察を受け、治療の必要性を確認することが重要です。
交叉咬合が起こる主な原因
交叉咬合の原因は、遺伝的要因と環境要因が関係していることが多いです。具体的には次のような要因が考えられます:
遺伝的要因
親から受け継がれる顎の形や骨格が影響することがあります。
上顎の成長不足
上顎が十分に成長しないことで、上下の顎のバランスが崩れ、噛み合わせがズレることがあります。
指しゃぶりや舌癖
長期的な指しゃぶりや舌を前に出す癖があると、顎の発育に影響を与え、交叉咬合が起きやすくなります。
その他の癖
寝る時に口を開けている、口呼吸をしているなどの癖も噛み合わせのズレを引き起こす要因です。
推奨される治療開始時期
早ければ早いほど望ましい
交叉咬合の治療は早ければ早いほど望ましいです。
顎の成長が活発な3歳頃から始めるのが理想ですが、成長段階に合わせて6歳、10歳、12歳以降でも適切な治療方法が選べます。
以下に年齢ごとの治療内容について詳しく説明します。
交叉咬合(噛み合わせのズレ)の年代別治療内容と使用装置、治療期間の目安
交叉咬合は、骨格的な問題が原因で発生している場合も多く、こうしたケースでは自然に治ることはほとんどありません。
放置すると顎の骨格のズレが進行し、顔の左右差が目立つようになるなど、見た目にも機能的にも影響が出る可能性があります。
そのため、早めに専門的な診断を受けることが大切です。
3~5歳
3歳はまだ顎の成長が始まったばかりの時期なので、積極的な矯正治療は行いませんが、悪化を防ぐためのアプローチを行います。
主に、噛み合わせを自然に良い状態に近づけるための「成長促進のための誘導治療」が中心となります。
具体的な対応内容
噛み合わせの観察
定期的な検診でお子さまの噛み合わせや顎の成長をチェックし、問題が進行しないよう見守ります。
生活習慣の改善
指しゃぶりや舌癖、口呼吸といった習慣は交叉咬合の悪化要因となるため、必要に応じて生活指導を行います。
予防的装置の使用
場合によっては簡単なトレーナー装置を使用し、悪化を防ぐこともあります。
この装置は、3歳でも負担にならない柔らかい素材で作られており、夜間や家での使用が可能です。
6~9歳
この年代は、上顎の成長が活発で矯正治療を開始する最適な時期とされています。
上顎の幅を広げることで、将来の永久歯のためのスペースを確保します。
治療内容
顎の幅を広げるための拡大装置を使い、交叉咬合の改善を図ります。
また、成長段階に合わせて筋肉バランスや舌の位置の改善も目指します。
使用装置
急速拡大装置
上顎を広げる装置で、歯が並ぶスペースを確保します。
上顎けん引装置
顎の前方成長をサポートする装置です。
T4K、マイオブレイス、プレオルソ
口腔機能を整えながら、軽度の歯並び改善に使います。
治療期間の目安
6ヶ月~1年半程度。顎の成長を見ながら、装置の調整や変更を行います。
10~12歳
永久歯が生え揃う時期であり、顎の発育もほぼ完了に近づくため、より本格的な矯正治療に移行することが多くなります。
治療内容
歯並びを調整し、交叉咬合の改善を図ります。
この年代では、顎の幅を広げるための拡大装置やワイヤー矯正などが主に使われます。
使用装置
インビザライン・ファースト
透明のマウスピース型矯正装置で、取り外しが可能なため、生活に支障が少ないのが特徴です。
急速拡大装置
まだ成長が残っている場合には、顎の幅を広げるために用います。
ワイヤー矯正
歯を適切な位置に動かすために、ワイヤーで少しずつ矯正します。
治療期間の目安
1年~2年程度。成長の状況に合わせて、装置や治療計画を調整しながら進めます。
12~18歳
この年代では、永久歯の歯列が完成し、歯並びを整える最終的な仕上げを行います。
また、1期治療で顎の土台が整っていれば、歯を抜かずに矯正治療ができる可能性が高まります。
治療内容
歯を動かすことで最終的な歯並びを整え、噛み合わせを改善します。
また、後戻りを防ぐために保定装置も活用します。
使用装置
インビザライン
透明のマウスピースを使用し、矯正終了まで少しずつ歯並びを整えます。
ワイヤー矯正
歯並びが複雑な場合に、ワイヤー矯正でしっかりと歯を動かし、最適な位置に配置します。
治療期間の目安
1年半~3年程度。歯の動きや噛み合わせの調整を行いながら進めます。