下顎前突(反対咬合・受け口)
下顎前突、別名「反対咬合」や「受け口」は、上の前歯よりも下の前歯が前に出ている状態を指します。
正常な噛み合わせでは、上の歯が下の歯より少し前に位置するのが理想ですが、下顎前突では上下の顎のバランスが崩れ、噛み合わせが逆転しています。
この不正咬合が長期間続くと、顎の成長に影響を与えたり、顔のバランスに悪影響を及ぼすことはもちろん、見た目を気にしたり、自分に自信が持てなくなったりすることがよくあります。周りの人とのコミュニケーションをためらう原因になることも少なくありません。
交叉咬合が骨格的な問題から来ている場合、自然に治ることは難しいため、早期に歯科医師の診察を受け、治療の必要性を確認することが重要です。
下顎前突が起こる主な原因
遺伝的要因
親から受け継がれる顎の形や骨格が影響することがあります。
上顎の成長不足
上顎が十分に成長しないことで、上下の顎のバランスが崩れ、噛み合わせがズレることがあります。
指しゃぶりや舌癖
長期的な指しゃぶりや舌を前に出す癖があると、顎の発育に影響を与え、交叉咬合が起きやすくなります。
推奨される治療開始時期
早ければ早いほど望ましい
下顎前突は、骨格の問題が原因で自然に治ることは難しいため、できるだけ早期に専門的な診断を受けることが大切です。
ただし、3歳時点では顎の成長を見守りつつ、悪化を防ぐアプローチを中心に行います。
6~9歳頃には上顎の成長が活発になるため、矯正治療を開始する最適なタイミングといえます。
下顎前突(反対咬合・受け口)の年代別治療内容と使用装置、治療期間の目安
3~5歳
この年齢では、定期的に噛み合わせを観察しながら、悪化を防ぐための「成長を促すサポート」を行います。
具体的な対応内容
噛み合わせの観察
定期的な検診でお子さまの噛み合わせや顎の成長をチェックし、問題が進行しないよう見守ります。
生活習慣の改善
指しゃぶりや舌癖、口呼吸といった習慣は交叉咬合の悪化要因となるため、必要に応じて生活指導を行います。
予防的装置の使用
場合によっては簡単なトレーナー装置を使用し、悪化を防ぐこともあります。
この装置は、3歳でも負担にならない柔らかい素材で作られており、夜間や家での使用が可能です。
6~9歳
この年代は上顎の成長が活発で、矯正治療を開始する最適な時期とされています。
上顎を広げることで、将来の永久歯のためのスペースを確保します。
治療内容
顎の幅を広げるための拡大装置を使い、反対咬合の改善を図ります。
また、成長段階に合わせて筋肉バランスや舌の位置の改善も目指します。
使用装置
急速拡大装置
上顎を広げる装置で、歯が並ぶスペースを確保します。
上顎けん引装置
顎の前方成長をサポートする装置です。
T4K、マイオブレイス、プレオルソ
口腔機能を整えながら、軽度の歯並び改善に使います。
治療期間の目安
6ヶ月~1年半程度。顎の成長を見ながら、装置の調整や変更を行います。
10~12歳
永久歯が生え揃う時期であり、顎の発育もほぼ完了に近づくため、より本格的な矯正治療に移行することが多くなります。
治療内容
歯並びを調整し、下顎前突の改善を図ります。
この年代では、顎の幅を広げるための拡大装置やワイヤー矯正などが主に使われます。
使用装置
インビザライン・ファースト
透明のマウスピース型矯正装置で、取り外しが可能なため、生活に支障が少ないのが特徴です。
急速拡大装置
まだ成長が残っている場合には、顎の幅を広げるために用います。
ワイヤー矯正
歯を適切な位置に動かすために、ワイヤーで少しずつ矯正します。
治療期間の目安
1年~2年程度。成長の状況に合わせて、装置や治療計画を調整しながら進めます。
12~18歳
この年代では、永久歯の歯列が完成し、歯並びを整える最終的な仕上げを行います。
また、1期治療で顎の土台が整っていれば、歯を抜かずに矯正治療ができる可能性が高まります。
治療内容
歯を動かすことで最終的な歯並びを整え、噛み合わせを改善します。
また、後戻りを防ぐために保定装置も活用します。
使用装置
インビザライン
透明のマウスピースを使用し、矯正終了まで少しずつ歯並びを整えます。
ワイヤー矯正
歯並びが複雑な場合に、ワイヤー矯正でしっかりと歯を動かし、最適な位置に配置します。
治療期間の目安
1年半~3年程度。歯の動きや噛み合わせの調整を行いながら進めます。